部屋から飛び出したスネークの目の前をリキッドが走り抜けた。
メタルギアのコックピットの前でリキッドは足を止めた。
「リキッド!!」
銃を構えながら叫ぶスネーク。
「兄弟に銃を向けるのか?」
リキッドは不適に笑いながら言った。
リキッドは今回の作戦の本当の目的を話し始めた。
スネークは本当の目的を知らなかった。
彼の役割は核発射を止めることでも人質の救出でもない。
FOXDIEをシャドーモセス島に運び、テロリストもろとも葬り去ること。
その後メタルギアREXを無傷で回収するために。
DARPA局長、ベイカー社長ともにシナリオ通りFOXDIEにより死亡した。
証拠隠滅のため、スネークも作戦後に死亡するようプログラムされている。
もちろんリキッドも…。
スネークを送り込む作戦の元締めは国防総省。
ナオミはFOXDIEに何らかの改変を加えたため、スネークやリキッドはまだ発症していないらしい。
このことを知った国防省はナオミを拘束し尋問している。
リキッドは血清を要求。
そして政府に核を発射すると言い残し、メタルギアに乗り込んだ。
巨大な鉄の塊が命を吹き込まれたかのように動き出す。
メタルギアが…起動してしまった…!!
逆間接の脚部に大きな頭部のような形をしたコックピット。恐竜でいうところの口の中がコックピットだ。
オタコンから弱点を聞いたスネークは弱点であるレドームを狙い攻撃をする。
一瞬REXは動きが鈍ったが、スネークに向かい突進してきた。
「死ね!スネーク!!」
やはり無理か…。
「早く逃げろ!」
諦め掛けたスネークの前にサイボーグ忍者が現れた。
「フォックス!!」
かつての戦友。グレイフォックス…。
フォックスはスネークを踏み潰そうとしたREXの足を両腕で受け止めた。
「ディープ・スロートよりは聞こえがいい…懐かしい名前だ。」
フォックスはREXの足を投げ飛ばし、後ろに飛びながらレドームを攻撃した。
その隙にスネークとフォックスは物陰に身を潜めた。
フォックスは意識を取り戻していた。
サイボーグ忍者としてではなくグレイ・フォックスとしてスネークに向き合った。
フォックスはナオミとのことを話し始めた。
戦争でナオミの両親を殺したこと。その罪滅ぼしにナオミを妹として育てたこと。
そして、本当の仇は自分だということを。
それをナオミに伝えてくれとスネークに託した。
「これがディープ・スロートとしての最後のプレゼントだ!!」
そう叫ぶとREXに向かっていった。
宙を舞い、銃でレドームを狙った。
しかしREXの動きは想像以上に早かった。
フォックスは壁とREXの顎に挟まれていた。
「追われた狐は…ジャッカルより強暴だ!!」
最後の力を振り絞り、レドームを破壊した。
電気系統に支障をきたしたREXは口を開けた。
コックピットが開いた。リキッドの姿が見える。
「今だ!スティンガーミサイルを撃ち込め!!」
スネークには撃てなかった。
次の瞬間、床に叩きつけられREXに踏み潰された。
「スネーク…さらばだ。」
スネークにはフォックスが微笑んだように見えた。
「フォーーーックス!!」
叫ぶしか出来なかった。
「貴様も踏み潰してやる!」
そのときREXはその場に倒れて、起動を停止した。
REXの倒れてきた衝撃でスネークは気を失った。
気がつくとREXの上にいた。
黒い煙の中にリキッドの姿があった。
リキッドは今回のテロの目的を語り始めた。
ことの始まりは1970年代。
「恐るべき子供達計画」
20世紀最強の戦士「ビッグボス」の遺伝子を使い、最強の軍隊を作り出そうとする計画。
そうして生まれた2人の子供が双子の蛇、ソリッドとリキッドだった。
だが二匹の蛇には決定的な違いがあった。
片方には優性遺伝子を集中させた。そして残りの劣勢遺伝子をもう片方に押し付けた。
劣勢を押し付けられたリキッドは
「自分はスネークの搾りかすだ」
とスネークを憎んだ。
今回のテロに参加していた一般兵達もまたビッグボスの遺伝子を注入された強化兵だった。
その強化兵「ゲノム兵」達が奇病に冒され死ぬようになった。
調べるとビッグボスの遺伝子が原因であることがわかった。
その原因を調べるため、ビッグボスの遺体を手に入れ研究するのが目的のようだ。
そして、原因を突き止め、その後ビッグボスの意志を継ぎ「アウターヘヴン」を再建すること。
それがリキッドの目的だった。
横に目をやるとメリルの姿があった。気を失っている。
メリルを人質に取ったリキッドはスネークとの対決を望んだ。
REXの上で2人の呪われた兄弟が殴りあう。
やはり優勢遺伝子のせいなのだろうか、数分後経っていたのはソリッド・スネークだった。
メリルを介抱し、REXから降りると大佐から連絡が入った。
REXが破壊され、核攻撃の恐怖がなくなった政府はシャドーモセス島の空爆を決定した。
メタルギア計画、恐るべき子供達。すべての証拠を消したい政府は空爆ですべてを消し去ろうとしている。
格納庫の横には外に通じる道があった。遠くの方に明かりが見える。
車で通るトンネルのようで、止めてあった車に乗り込みアクセルを大きく踏み込んだ。
外の光が見え、もう少しで外というところで後ろから声が聞こえた。
「スネェェェェエク!まだ終わってない!!」
傷だらけのリキッドが追ってきていた。
リキッドは車を激しく体当たりさせてきた。
2台の車はバランスを崩し、転がりながら雪の上に投げ出された。
ぼんやりと目を覚ましたスネークの目の前にリキッドの姿があった。
車に下半身を挟まれ動けないスネークにリキッドはゆっくりと銃口を向けた。
「スネー…ク」
引き金を引く寸前。リキッドはその場に膝から崩れ落ちた。
「フォックス…ダイ…?」
リキッドは動かなくなった。FOXDIEの発症によるもののようだった。
スネークはつぶやいた。
「リキッドが発症した…。」
リキッドは死んだ。
死因はFOXDIE。
大佐から連絡が入り空爆は行われないことを伝えられた。
国防省長官は逮捕され退任した。
メタルギア、新型核弾頭の開発。今回の演習計画はすべて国防省長官の独断で行われたものだった。
「これが独断…?」
しかし今はこれ以上疑ってもキリはない。
世界は核の脅威から救われ、空爆も行われない。助かったのだ。
大佐はスノーモービルで凍結した海を渡り脱出することを勧めた。
しかし、国防省情報局や国家安全保障局の人間はスネーク達を無事に帰すとは思えない。
大佐は「スネーク達はジープでアラスカの海に沈んだ」ということにして、フォックス諸島にヘリを下ろしてくれるそうだ。
スネークはオタコンの救出もしてくれるよう頼み、大佐に礼を言った。
「スネーク、私はもう大佐ではない。」
「そうだったな。」
スネークは再び礼を言うとスノーモービルに乗り込んだ。
脱出する前に一つ確認しなければならないことがあった。
FOXDIEのことだ。
同じ遺伝子を持つリキッドは発症した。ということは、スネークもいつか発症することになる。
ナオミに発症はいつに設定したのか聞いたが、
「それは貴方次第。スネーク、生きて。」
そう伝えられた。
スネークはエンジンをかけた。
後ろに腰をかけたメリルはスネークに何かを差し出した。
∞という刺繍の入ったバンダナだった。基地の中で見つけたものらしい。
スネークは記念に取っておこうと言い大事にしまった。
「生きるものすべてに春は来る。希望を持つことだ。俺達の新しい道、目的を探すんだ。」
そういうと2人は見つめあった。
「さあ、人生を楽しもう。」
エンジンは軽快な音をたて、2人はアラスカの朝日に向け旅立っていった。
-METAL GEAR SOLID END-
すべてが終わった後、オセロットは何者かと電話を交わしていた。
「はい。全員死亡しました…あの2人は生存しています。」
包帯の巻かれた右腕を見つめながら男は言う。
「運び屋の方はもうすぐFOXDIEが。
…はい、模擬核弾頭の演習データは私が回収しました。
ええ…誰も私の正体に気づいていません。私の正体を知るDARPA局長は始末しました。
はい。結局は劣勢が勝ったことになります。リキッドは最後まで自分が劣勢だと思い込んでいたようです。
ええ、そうですね。世界を引き継ぐものは劣勢でも優勢でもありません。
ええ、貴方が三人目。ソリダスであることもつかんではいません。
あの女はどうします?
…わかりました、監視を続けます。ありがとうございます。
…大統領。」
男は受話器を置き、不敵に微笑んだ。